開業医インタビュー
魚崎駅前ふみ脳神経内科
原ふみ先生
脳神経内科 / 糖尿病内科 / 女性内科
2022年10月に開業した「魚崎駅前 ふみ脳神経内科」。シンボルマークであるバラの花に出迎えられ院内に入ると、自然採光の明るい空間に温もりのあるヘリンボーン床。「患者さまがホッとできる場所をつくりたい」と話す、原ふみ院長の愛情がこめられたクリニックです。 神経内科医として長年、認知症やパーキンソン病などの治療に携わってきた原先生。病院での診療経験も長く、また「女性の健康」への強い想いから女性内科外来も設けるなど、身体や心のさまざまな不調に対応しています。患者から「優しさがあふれるクリニック」と評される、ふみ脳神経内科 誕生までの経緯やこだわりについて、原先生に伺いました。
明るい雰囲気が印象的なクリニックですね。クリニック開業にあたり大切にしたことは何ですか?
まず、開業するのであれば「地元に恩返しできる場所で」と思い、神戸市東灘区を選びました。私は、震災まで神戸に住み、神戸高校に通っていましたし、東灘区には今も実家があります。そして、「どんなクリニックを目指そうか」と考えた時、大好きな本である王由由さんの『バラ色の暮らし』の一節が心に浮かびました。
“毎日の暮らしは、決してバラ色ばかりではありません。 悲しいこと、辛いこと、苦しいこと、イヤなこと、そして思いがけない病気や事故。いつも明るい気持ちで、前向きに歩いていきたいと思っていても、どうしてもできない日もあります。 だからこそ、わが家だけはバラ色であってほしい、と思うのです。“
クリニックに来られた方が、まるで「わが家」のようにホッとして笑顔になれる場所を目指しました。そのために心がけているのが、まず患者さまのお話をしっかり聞くこと。「何を求めていらっしゃるのか」「今日、1番おっしゃりたいことは何か」を理解し、患者さまの気持ちに寄り添うことを大切にしています。
患者さまを1人の人間として敬ってほしいので、スタッフにも患者さまにていねいな言葉で対応してもらうようお願いしました。おかげさまで、志の高い医師仲間やスタッフに恵まれ、ファミリーのような雰囲気で患者さまを迎えられていることを、本当に嬉しく思います。
クリニックの特徴や強みについて教えてください
神経内科と精神科の経験を活かし、幅広い治療法でアプローチ
当院は、魚崎駅から徒歩1分で、近くに住吉川が流れています。パーキンソン病の方がリハビリを兼ねて川沿いを歩いて来られることもあり、環境面でも患者さまに喜んでいただいています。また、車椅子でお越しいただけるようバリアフリーにしています。周囲に病院が多いためスムーズに連携できることや、駐車スペースに救急車をつけられるので、救急の患者さまをすぐに運べるのもメリットです。
私の強みは、脳神経内科医でありながら、精神科病院での診療経験が長いことです。例えば、認知症の患者さまは精神疾患と似た症状が見られることがあります。「この症状が出たらこの薬に移行しよう」「ここまでの症状が出たら精神科救急だ」と判断でき、精神科病院へ相談依頼ができます。また、パーキンソン病などの脳神経疾患についても、精神科の知見を活かして、幅広い治療法をご提案できることが強みです。
また、認知症の臨床経験も長く、認知症予防には強い思い入れがあります。今、特に力を入れているのは「MCIスクリーニング検査」です。40代から受けられ、少量の採血で将来の認知症のリスクを調べられます。当院では2名の栄養士とともに、生活習慣の改善・食事指導を通して認知症予防をサポートしています。認知症の中には、早期発見・早期対策で予防できるものもあります。遺伝素因がある方や、気になる生活習慣がある方は、ぜひ早めに検査を受けていただきたいです。
女性内科外来は、女性医師であり経験者だからこそのこだわり
女性内科外来を立ち上げたことは、私のこだわりの1つです。私自身、高校時代から激しい内膜症があり、救急車で運ばれて入院したこともありました。子宮内膜症やPMSなどについて勉強し、さまざまな治療も受けました。大病を患い生理が止まってホルモンバランスを崩し、身近にいる大切な人に当たってしまい落ち込んだ経験もあります。同じように悩む女性をケアしたいと思ったんです。
当院の女性内科外来には、「大切にしたい人に当たってしまう」と診察室で泣かれる患者さまが本当にたくさんいらっしゃいます。同じ女性だからこそ、同じ経験をしているからこそ、気持ちがよくわかります。治療を経て、「すごく落ち着きました!」と喜ぶ患者さまの姿を見ると、女性内科外来を立ち上げてよかったと思います。
クリニック開業の背景には、先生ご自身のご病気の経験があるそうですね。
「もう生きられない」と覚悟。つらい治療を乗り越え仕事復帰へ
勤務医として働いていた頃のことです。子育てや仕事で忙しく、「しんどいな」「なんかおかしいな」と思いながらもやり過ごしていました。すると、ある日突然、激しい胸の痛みに襲われたんです。血液のがんでした。当時、上の子が小学1年生、下の子が年少。「子どものために、あと2・3ヶ月でも生きていてあげたい」と思ったものの、PET検査であまりにも強く反応していたため、「ダメかもしれない…」と絶望的な気持ちでした。
そんな私に、担当医だった大阪大学附属病院 血液内科の一井倫子先生が「希望はある。半年、抗がん剤治療をして完治を目指しましょう!」と言ってくださったんです。力強いそのお言葉に「半年がんばれば、子どもと生きていけるかもしれない…」と遠くに希望の光が見えました。同時に「もし、また医師に戻れたら、こんな力強い言葉を患者さまにかけてあげられる医師になりたい」と思いました。家族、そしてこれまでの人生で出会った多くの友人たちの多大な支えもあり、つらい抗がん剤治療を何とか乗り越え、退院することができました。
勤めていたさわ病院の澤滋先生が復帰を後押ししてくださり、理解ある同僚にも助けられ、退院から3ヶ月半で仕事に復帰しました。初めは、仕事から帰ったらぐったり疲れて寝込む状態でしたが、家にいても悶々としてしまうし、心機能や体力のリハビリにもなったので、早めに復帰してよかったと思っています。
また、命に関わる病気になったことで、患者さまやご家族の気持ちが理解できるようになり、自分だけでなく患者さまにとっての「余命の時間の使い方」への考え方が変わったように思います。例えば、「2・3ヶ月でも延命したい」など、それぞれの事情がよくわかるようになりました。
「医師としてどう生きるか」を考え、開業を決意
病気から3年経って体力が戻り、下の子が小学校に上がるタイミングで、「医師として私に何ができるだろう」と考え始めました。「いつまで勤務医を続けられるだろう」「主治医として責任を持って患者さまを診たい」「できるだけ長く医師を続けたい」。そのためには、今、開業するのがベストだと思ったんです。
ただ、家事や育児との両立や、自分の体力や再発の不安があり、なかなか決心できずにいました。しかし、お世話になっているさわ病院の澤滋先生や宮地病院の宮地千尋先生に、背中を押していただいたことが追い風になりました。また、最大の恩師である柴﨑浩先生が亡くなられたことも、大きな理由のひとつでした。私の結婚の時に柴﨑先生が送ってくださった“tomorrow is another day.”という言葉には、「目標を持って生きる人間と持たない人間では、到達地点が違う」という意味が込められています。その言葉を胸に、目標を持ってがんばっていきたいと思ったんです。
また、闘病中にお世話になった家政婦さんや親友が、「この先、誰が先に病気になるかなんてわからないよ」「やりたいと思っているなら、今やるしかない!」と励ましてくれました。その言葉を聞いて、「“子どもがいるから” “病気をしたから”と言い訳するのは、もうやめよう」と開業を決意しました。
信頼できるコンサル会社と出会えたことも、大きな支えになりました。よく「開業は孤独だよ」と医師仲間から聞いていたのですが、まったく孤独を感じたことはありません。I&Hのコンサルの方々は、スタッフ面接に入ってくださったり、私の想いを汲み取ったHPを作ってくださったりと、まるで同じ会社の仲間のように伴走してくださっています。
クリニックを開業されて、一番のやりがいや喜びは何でしょうか?
クリニックをスタートした時、スタッフには「みんなでクリニックを作っていって、20年後も一緒に働いていたい」と伝えました。患者さまはもちろん、働いているみんなが幸せになれる場所にしたいと思ったからです。その想いをスタッフも受け止めてくれて、「いい時も悪い時も、先生についていきます」と私を支えてくれています。
一緒に働く相野先生と細川先生は私の住友病院時代の同僚にあたり、高血圧や糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を専門とするレベルの高い総合内科専門医です。長い付き合いであり、医師としても人としても、心から信頼できる仲間です。「優しさがあふれているクリニックですね」と患者さまに言っていただけるのも、スタッフや医師の仲間がいるからこそ。すばらしいメンバーと一緒に働けることに、日々感謝しています。
医師としてやりがいを感じるのは、やはり患者さまの症状が改善された時です。ある時、パーキンソン病で、「ほかの病院では話を聞いてもらえない」と嘆いておられる患者さまが来られました。肩を引っ張られているような幻覚の症状があったのですが、私はパーキンソン病の診療経験も長いため、患者さまの訴えがよく理解できました。
しっかり話を聞くことから始め、3ヶ月かけて合う薬を見つけたところ、症状が落ち着ついて穏やかになられたんです。「こんなに痛みがなく穏やかな気持ちになったのは、何年かぶり」と言っていただけました。ほかにも「10年ぶりに足がむずむずして我慢できなかったのが治った」「4年ぶりに朝起きた時にスッキリしている」という患者さまもいらっしゃり、本当にやりがいを感じています。
これからの目標と、地域のみなさまへのメッセージをお願いします
開業前のクリニックの内覧会で、オリジナルデザインのお薬手帳を作ってお配りしました。おしゃれなデザインのお薬手帳で、患者さまの気持ちが少しでも明るくなればと試みたのですが、大好評で今でも気に入って使い続けてくださっています。実は、このような試みをしたのは、長年気になっていることがあったからです。また、自分が患者として入院していた時に気づいたことも多くありました。
それは、福祉・介護施設や用具が、利用者にとって「使いたい」と思うものになっていないのでは…ということです。例えば、病気で歩行が困難な患者さまに押し車や杖を提案すると、「あんな恥ずかしいもの使えない」と言われることがよくあります。転んで怪我をすると危ないので歩行補助用品を使っていただきたいのですが、「The お年寄り」な見た目を嫌がる方も多いんです。おしゃれで使いたくなるデザインかつ手が届くお値段の用具を、いつかご提供できればと思っています。
また、一緒に働いている医師仲間やスタッフが、さらにやりがいを持って働ける環境を作りたいと思っています。スタッフの生きがいになって地域貢献に繋がることであれば、どんどんチャレンジしていきたいです。
ここ東灘区には私の両親も暮らしています。ですので、当院に来られる患者さまを身内のように感じています。どんな些細なことでも、ご心配なことがありましたら気軽にお越しください。当クリニックが地域のみなさまにとって、わが家のように安心できる場所であることを願っています。
クリニック情報
- clinic name
- 魚崎駅前ふみ脳神経内科
- subjects
- 脳神経内科/糖尿病内科/女性内科
- access
- 〒658-0083
兵庫県神戸市東灘区魚崎中町4丁目6-15 第二松原ビル1階
- tel
- 078-451-1211
- web
- ホームページはこちら
サポート担当者より一言
当社「阪神調剤薬局魚崎店」隣接のテナント(約17坪)物件をご紹介させていただきました。
明るく前向きなお人柄で患者さんからも信頼されている先生です。
お子様も小さく子育てとの両立となり、限りある時間・設備・予算での開業支援を意識しました。
立地は阪神電車、六甲ライナー「魚崎」駅前で周辺にお住まいの方、沿線からの集患をホームページ、看板にて支援、内覧会もご支援し多数のご来院となりました。
開業コンサルタント
清水 祐哉